災害対策からクマ対策まで!?
災害対策用ドローン「Rescue-K」の開発ストーリーに迫る

災害・物流・点検などのドローン開発を行っているイームズロボティクス株式会社。さがみロボット産業特区の支援を受けて、災害対策ドローン「Rescue-K」を開発しました。現在も改良と導入に奮闘している同社社長の曽谷さんと開発担当者の山梨さんに、災害時の「Rescue-K」の役割や開発時の困難などについてお話を伺いました(記載内容は2025年度時点のものです)。

インタビュー

曽谷 英司

イームズロボティクス株式会社 代表取締役社長

日立製作所系列のシステム会社にて、金融業界への営業を一貫して30年担当。その後、2015年に、新規事業としてロボット事業を立ち上げ責任者として着任し、ドローンビジネスへ参画。ロボット事業では、国内外への事業展開から、各事業会社との協業推進、営業活動を行う。主な実績として、ドローンの海外サービサーとのアライアンス締結・海外における橋梁点検の受注・国内での点検測量を中心とした100件を超えるサービス受注がある。

山梨 寛治

イームズロボティクス株式会社 開発本部

金沢工業大学を卒業後、ドローン開発の世界に身を投じる。現在はイームズロボティクス株式会社 ソリューション運用部にて、機体の企画・開発から運用まで幅広く従事。出身大学のある石川県が令和6年能登半島地震に見舞われたことを受け、災害対策ドローンの普及と活用に強い使命感を抱いている。能登半島地震の経験から災害対策ドローン「Rescue-K」を開発

捜索活動・避難誘導・物資輸送で活躍!

 

── まず、貴社の事業内容について教えてください。

 

曽谷さん:当社は産業用ドローンを中心とした自律機器の製造販売、ご提案、開発を行っています。すべての部品を日本製で揃え、高い安全性とクオリティ、サポート体制が特徴です。ドローンは空を飛ぶものが一般的ですが、当社は陸海空それぞれに対応したドローンを開発・製造している国内唯一のメーカーでもあります。お客様のご要望に応じて、カスタマイズしてオリジナルのドローンを開発するケースも多くあります。

 

本社が福島県南相馬市にあることから、災害対策の分野に力を入れているのも当社の特徴です。災害対策用ドローンの開発から始まり、ドローン操作の研修やガイドラインの作成なども行っています。加えて国が主催する防災訓練に毎年参加したり、福島県と防災協定を結んだり、大手物流企業様と協業して災害時の救援物資の配送に関わったりと、さまざまな組織と連携して有事に備えています。

 

── さがみロボット産業特区の支援を受けられた「Rescue-K」について、開発のきっかけや経緯について教えてください。

 

曽谷さん:「Rescue-K」は、能登半島地震の救援活動での経験を活かして開発した、主に自治体様向けの災害対策ドローンです。当社の「Rescue-K」以外にも災害対策用ドローンは多くの種類がありますが、実際の災害現場を経験したという点で「Rescue-K」は一歩リードしていると言えます。例えば能登半島地震では孤立集落と連絡が取れない事態が発生したことから、「Rescue-K」で衛星電話を孤立集落に運ぶアイディアを着想し、開発に活かしました。まだ改善の余地はありますが、着実にできることが増えてきています。

 

──「Rescue-K」の特徴や災害現場での役割は何でしょうか?また、どのような組織への導入を検討されているのか教えてください。

 

「 Rescue-K 」

曽谷さん:基本的には、「Rescue-K」は捜索活動・避難誘導・物資輸送の3つの役割があります。

 

捜索活動...特殊カメラで被災者や遭難者を探索する。
避難誘導...スピーカーで避難誘導や避難指示を出す。
物資輸送...災害支援物資や衛星電話などを専用ユニットに入れて、要救助者に向けて投下して、必要物資を届ける。

 

主な導入先は自治体様です。政府は能登半島地震を受けて、災害時にはドローンが有効であると判断して自治体に予算をつけているため、今後需要が高まると想定しています。当社の「Rescue-K」はまだ導入には至っていないものの、多くの自治体様よりご関心を寄せていただいています。

 

──自治体が「Rescue-K」を導入する際のハードルは何でしょうか?

 

曽谷さん:自治体様は、「ドローン導入時に研修を受けても、長期間操作しないと、いざという時に操作できないのでは」という危惧があると聞きます。また自治体様では数年に一度の異動のため、ドローンの研修を受講した人材が災害時に対応できない恐れもあります。

 

その対策として、平常時に他の用途で使用いただいたり、当社が開催する研修を受講いただいたりしています。研修では当社の社員が自治体様にお伺いして職員の方々にレクチャーし、ドローンの国家資格または民間資格を取得いただくことも可能です。

 

とはいえ、こういった対策はある程度規模の大きな自治体様のみ可能で、小さな規模の自治体様がドローンを導入するのはハードルが高いと考えます。導入しやすいように、ボタン一つで操作が完結するようなドローンを開発していく予定です。

さがみロボット産業特区で、
開発コスト100%の支援を受ける

──貴社はさがみロボット産業特区の「ドローン開発支援事業」に採択、また「ロボット実用化促進事業」の「重点プロジェクト」に指定されました。支援を受けられた経緯についてお聞かせください。

 

曽谷さん:私は神奈川県二宮町出身で、以前から神奈川県がドローン開発に力を入れられていることを認識していました。

 

今回は、藤沢市にある湘南工科大学様と別のプロジェクトでご一緒した経緯があり、その流れで「ドローン開発支援事業」を知り、応募させていただきました。

 

──どのような支援を受けられていますか?

 

曽谷さん:全面的にサポートしていただいておりますが、大きく2つあります。まずは費用面でのサポートです。今回「Rescue-K」の開発にかかった費用を100%支援いただきました。今まで他制度のさまざまな公募に関わってきましたが、費用面で100%支援していただける機会は他にありませんでした。

 

最新のドローンを開発するにはどうしてもコストがかかります。今回は初めて開発する機体だったため、最初に設計した通りにはいかない部分も多く、試行錯誤するには費用がかかってしまいます。費用を100%支援いただいたおかげで、理想的なドローン開発が行えたと思います。

 

もう一つは、性能・動作検証の場所のご提供です。今回、「Rescue-K」の性能・動作検証のために、湘南工科大学様のフットサルコートをご提供いただき、スピーカーテストやサーモカメラテスト、投下機構テストを行いました。街中でドローンを飛ばせるエリアは限られており、周辺の住民の許可を取る必要があります。当社だけでは場所を手配するのは難しいため、関係者の方々にサポートいただき大変助かりました。

 

付随して、「重点プロジェクト」の支援を含め3年間と長期間に及ぶのも良い点だと思います。ドローンは広報や導入を含めるとどうしても長い期間が必要になります。今後は認知拡大に力を入れていくため、広報費でもサポートいただく予定です。

 

──湘南工科大学様での性能・動作検証を通して得られた成果はありますか?

 

山梨さん:性能・動作検証で得られたことはたくさんありますが、印象に残っているのはスピーカーテストです。スピーカーは重すぎると飛行に悪影響が出るので、できるだけ軽くて出力が大きいものを探すのに苦労しました。オリジナルのスピーカーを開発することも考えましたが、時間的に難しかったので、最終的には既製品のなかで最適なものを選びました。スピーカーテストでは、採用したスピーカーで約100m先でも聞き取れることがわかり、大きな成果だったと思います。

 

他にも、スピーカーには磁石を使っており、「Rescue-K」で使っているコンパスと干渉してしまうのではという懸念がありました。しかし、スピーカーテストでは干渉は起こらないことがわかり、性能・動作検証を行った価値があったと思います。

 

性能・動作検証では改善点も見つかりました。物資を投下する際に、狙った位置に落とすのが想像以上に難しいことがわかりました。狙った場所の真上から投下しても、風の影響などでピンポイントに落とすのが難しく、操作でカバーする方法が今のところの最適解です。物資の投下については、「何mの高度だったら落としても壊れないのか」など、これから検証する必要がある部分が多いです。


「Rescue-K」はクマ対策にも!?
新しいものを作り続けて日本のドローン産業を盛り上げたい

──今後どのように「Rescue-K」の認知拡大を図っていく予定ですか?

 

曽谷さん:現状、自治体様向けにウェビナーを開催したり、ダイレクトメールを送ったりして広報活動をしています。お問い合わせいただくことも増えてきました。

 

当社では災害に関する調査事業も行っており、例えば福島県では災害時に県内で約250か所が孤立する恐れがあると調査でわかっています。このような調査結果をご提供することで、防災意識を高めていただき、「Rescue-K」の認知にもつなげていけたらと考えています。

 

──「Rescue-K」の今後の展望についてお聞かせください。

 

曽谷さん:ドローンを取り巻く技術は、日進月歩で進歩しています。それに伴い、「Rescue-K」も飛行時間が長くなったり、悪天候の中でも飛べるようになったり、さらにレベルアップできるはずです。

 

さらに、災害以外でもクマ対策としても「Rescue-K」に注目いただいています。クマが街中に出没した場合、「Rescue-K」が音を出してクマを誘導することもできますし、クマが嫌がるものを落として住処に帰ってもらうこともできます。鳥獣害対策としても展開していけたらという考えです。

 

 

──「Rescue-K」以外の今後の貴社の展望についてもお聞かせください。

 

曽谷さん:当社が注力しているのは災害・物流・点検の分野です。そのなかで、特に力を入れていきたいのが、災害と物流を掛け合わせてドローンを活用していくことです。現在協業している大手物流会社様と一緒に、災害時の救援物資の配送事業を全国に展開していこうと考えています。

 

災害分野では、引き続き「Rescue-K」の普及に注力していきます。

 

クマ対策のような私たちでは思い付かないようなアイディアがあると思うので、何か思いついたらぜひご連絡いただけると嬉しいです。

 

──さがみロボット産業特区に関心を持っている企業様、技術者の皆さまに向けて、メッセージをお願いいたします。

 

曽谷さん:ドローンは成長産業ですが、日本のドローン開発の現状はまだまだ海外に負けていると思います。中国製が世界シェアの大半を占めており、日本のドローン産業はまだまだ伸び代があるでしょう。一方で、日本でチャレンジ精神を持っている人は少なくなっているのも感じており、このままでは業界全体が収縮してしまうのではと危惧しています。

 

私としてはこれからも面白いものや新しいものを作っていきますので、みなさんとご一緒に業界を盛り上げていけたらと思います。



<県の支援事業>

実証実験の結果の詳細は、ロボット導入サポートブックとして、次のウェブページにまとめられています。
https://sagamirobot.pref.kanagawa.jp/supportbook/

自社の施設にも導入したいという場合は、県が設置しているロボット実装促進センターに無料で相談ができます。
https://www.pref.kanagawa.jp/osirase/0604/jisso_center/

「災害対策用ドローン「Rescue-K」を購入される場合は、県の「ロボット導入支援補助金」で導入経費の一部の補助を受けられます。詳細は、次のウェブページをご覧ください。
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/sr4/robot-donyu-hojo.html

災害対策用ドローン「Rescue-K」は、「バーチャルロボットタウンさがみ」ウェブサイト内で、3D・AR・3Dメタバース空間で閲覧・体験できます。詳細は次のウェブページをご覧ください。
https://sagamirobot.pref.kanagawa.jp/virtual/3d-catalog/eams_robotics_rescuek/