さがみでつながる!開発企業インタビュー

ロボットによるインダストリーソリューションで、
人が人らしく働き、暮らせる世界を創造する

海外のロボットメーカーと連携し、国内向けにソフトウェアを開発、現場に応じたソリューションを提供しているSenxeed Robotics(センシードロボティクス)株式会社。AIコミュニケーションロボット、配膳・広告ロボットなど、多彩なロボットの組み合わせによって実績を重ねる今、これまでの歩みや今後の展望について、CEOの田口大悟さんにお話を伺いました。(記載内容は2024年度時点のものです。)

インタビュー

田口 大悟

Senxeed Robotics株式会社 CEO

慶應義塾大学経済学部卒業後、株式会社キーエンスに入社。その後Senxeed Robotics立ち上げと同時にセールス&マーケティングマネージャーとして参画し、ロボット導入のコンサルティング、サービス企画・開発を進め、国内外のロボット事情に精通。2023年8月よりCEO就任。

田口 大悟(Senxeed Robotics株式会社 CEO)
海外のロボットメーカーと提携し、
国内での課題解決を目指してソフトウェアを開発・提案

──ロボットメーカーではなく、「ロボットインダストリーソリューション企業」ということで、まずは事業内容について教えてください。


中国や韓国、イタリアなど海外のロボットメーカーと提携してハードウェアを輸入し、日本で導入するためにソフトウェアをカスタマイズして提供しています。言語を日本語にすることはもちろんですが、一番力を入れているのは、日本の文化に合わせた、わかりやすく使いやすいユーザインタフェースの開発です。商業施設や病院など、現場によって課題は異なるので、それぞれのニーズに応えたロボットを開発して提案しています。


──それぞれの課題に応えるロボットの提案が、企業理念である「ロボットと人で生きる世界を作っていく」につながるのですね。具体的には、どのようなビジョンを描いていらっしゃいますか?


イメージとしては、人がしなくても良いことはロボットに任せて効率的にし、クリエイティブなことやコミュニケーションなど、人にしかできないことに人が注力できる世界です。例えば接客の場合、相手を40代の女性だと認識しておすすめ商品を提案することなどは現在のロボットにはまだ難しく、人だからこそできる「気遣い」だと思います。人がそういった部分に集中できるというのが、思い描いている世界です。


──サイトで、「人とロボットが一緒に進歩する」というキャッチコピーを掲げていらっしゃることにもつながるのですね。


そうですね。配膳や配送、清掃などの人手不足という課題をロボットが解決して効率的になっていくほど、人は、人にしかできないことの質を高めて進歩することができます。ロボットだけでなく、人も一緒に進歩するという表現を使っているのは、そのためです。ロボットがサポートすることで効率的にできる課題はさまざまなので、1つの施設に1種類のロボットだけでなく、複数のロボットを組み合わせての提案もしています。


特区の支援により、商業施設、病院などで実証実験。
現場で得られた課題と成果とは

──現在、国内のさまざまな施設で実証実験を重ね、着実に実績を積まれています。さがみロボット産業特区の支援も2022年度から始まり、2023年は商業施設「アリオ橋本」で実証実験をされました。この時に提案されたロボットについてお聞かせください。


事前にアリオ橋本の担当の方から、課題を2つ伺っていました。1つ目の課題は広告入れ替え作業の効率化です。アリオ橋本くらいの大きな商業施設では壁や柱にさまざまなポスターが貼られているので、イベント告知などのたびに入れ替え作業があり、大きな負担となっていました。そこで配膳・広告周回ロボットの「CADEBOT(ケイドボット)」が、代わりにイベント告知をするという実証実験を行いました。
ロボットのトレイ部分にチラシを乗せ、ディスプレイで情報を流して館内で動かしたところ、ポスターよりも注目度が上がり、チラシも取ってもらえて集客力も上がるという成果がありました。


──配膳ロボットが運べるのは食事だけではない、活用シーンのイメージが広がる実証実験ですね。もう1つの課題と、提案されたロボットはどのようなものですか?


2つ目の課題は、インフォメーションにいる受付の方たちの仕事の効率化です。これまでホテルなどで実証実験を行った経験をもとに、案内ロボット「Cruzr(クルーザー)」を提案しました。ディスプレイにフロアマップを表示して、お客さまが行きたいところを選ぶと、自律走行して目的地まで案内をしてくれるロボットです。こちらも想定以上の活用がなされて、人件費の削減が可能になることが把握できました。


──湘南鎌倉総合病院でも実証実験を行っています。こちらでの課題と、提案されたロボットはどのようなものでしょうか。


課題は、看護師さんが担っている1日2回のカルテ運搬業務の効率化です。看護師さんの負担を軽減するために、アームを使うことで、エレベーターに通信連携なしで乗ることができる自律移動ロボット「GAEMI(ゲミ)」を提案しました。これは韓国のロボットメーカーの新しい製品で、日本では初めて私たちが導入しています。国内のホテルではすでに使われているのですが、病院で使用するのは初めてでした。


──国内初、病院での「GAEMI」実証実験ということで、どのような課題と成果がありましたか?


これまでホテルでしか導入されていなかったロボットが病院で動くとなると、安全面への配慮がまったく変わってきます。病院は、とにかく安全第一です。例えば動く時に無音だと車椅子の方などが気づかず、ぶつかってしまう可能性があるのでアナウンスが必要ですし、人や物があったときに反応するセンサーの範囲をより広くする必要も出てきます。
このようにさまざまな面でリスクを想定しながら実証実験を重ねたことで、病院の業務もロボットに代替できる可能性が確認できました。今後は検体を運ぶなど、さらに医療現場での導入に注力していきたいと考えています。


サポートがあるから、実証実験に舵を切れる。ロボットの進化と社会課題を見据え、逆輸入も視野に!
サポートがあるから、実証実験に舵を切れる。
ロボットの進化と社会課題を見据え、逆輸入も視野に!

──お話を伺った3台のロボットは、さがみロボット産業特区の「ロボット導入支援補助金」の対象ロボットになりました。実証実験やこのような支援は、どのように役立っているでしょうか。


実証実験の場所や機会の提供は非常にありがたいですし、費用面のサポートも大きいです。例えば湘南鎌倉総合病院での実証実験は、初めて「GAEMI」を国内の病院で動かすということで私たちにも不安がありましたし、エンジニアリングの部分で開発費がかかるという費用面での課題もありました。さがみロボット産業特区の実証実験にはそういった費用面のサポートが含まれていたので、そこは私たちも「とりあえずやってみよう」と舵を切れたというのはすごく大きかったですね。2024年度もあと2回、実証実験を行う予定です。


──今後は、どのような支援を期待していますか?


実証実験の先の、導入ですね。「こういうロボットが今、神奈川県と一緒に実証実験していて、活用できるのですよ」と、より多くのお客さまに情報を届けてもらう部分に期待しています。私たちは営業リソースが多くはない会社なので、そういったお客さまへのアプローチが強化できるととても心強いです。


──センシードロボティクスさまの今後の展望についてお聞かせください。


私たちの事業スタイルは、日本の施設にとっていかに良いロボットを見つけられるか、日本で導入できるか、ということなので、まずは海外のいろいろなメーカーに今後も目を向けて最先端のロボットに触れていきたいと思います。3、4年前には、配膳ロボットがこんなに増えるとは誰も想像していなかったと思うので、今後も、どのような進化があるかはわかりませんから。
それと同時に、社会ではどんな課題があるのかを見ていくことも重要だと考えています。私は現場にかなり足を運んでいろいろな方の話を聞くのですが、直接話を伺うからこそ把握できるニーズがあります。5年後には日常的に人型ロボットが歩いていて、私たちはどうしたら施設で使いやすくなるかを考え、カスタマイズしているかもしれませんね。
あとは、逆輸入も視野に入れていきたいと考えています。国内で成功事例を重ね、海外に向けてカスタマイズするということも、いずれは手掛けていきたいです。


──最後に、さがみロボット産業特区に関心を持っている企業さま、技術者の皆さまに向けて、メッセージをお願いいたします。


日本におけるサービスロボットの導入は、産業用ロボットに比べるとまだそれほど広がってはいません。より良いロボットがどんどん出てきたほうがすそ野が広がるし、お客さまの入り口も広がるので、私自身は他のロボット関連企業の皆さんを競合他社という見方はしていません。
ロボットがこの世にたくさんあればあるほど嬉しいですし、私たちもお客さまへさらにいろいろなロボットを組み合わせて提案できると思うので、技術者の方たちとどんどん情報交換していきたいです。ぜひ一緒に、ロボットでいい未来を創っていきましょう。



<県の支援事業>

実証実験の結果の詳細は、ロボット導入サポートブックとして、次のウェブページにまとめられています。
https://sagamirobot.pref.kanagawa.jp/supportbook/

自社の施設にも導入したいという場合は、県が設置しているロボット実装促進センターに無料で相談ができます。
https://www.pref.kanagawa.jp/osirase/0604/jisso_center/

また、自律移動ロボット「GAEMI」、案内ロボット「Cruzr」、配膳・広告周回ロボット「CADEBOT」を購入される場合は、県の「ロボット導入支援補助金」で導入経費の一部の補助を受けられます。詳細は、次のウェブページをご覧ください。
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/sr4/robot-donyu-hojo.html